
家と庭が一体となった暮らしを日本でも
バブル景気に湧き始めていた80年代後半。いまでは珍しくない“エクステリア(屋外設備)”や“ガーデニング”という考えを、日本に初めて広めたのが「エクシオール」という商品だ。きっかけは、当時の社長がアメリカで見た、家と庭が一体となった暮らし。天気の良い日は庭に出て、太陽の光や風といった自然を身近に感じることができるというものだ。
「庭はもうひとつのリビング。これぞ21世紀の理想の暮らしだ」
日本でもこんな暮らし方を提案したい──帰国するなり、当時の開発部の課長に“新しい外部空間”の開発を指示した。
あえて“すきま風”が吹き込むよう設計
集められた開発スタッフは10名ほど。しかし、新商品に明確なイメージを持つ者は誰一人いなかった。庭をリビングにするという考え方は、当時の日本ではあまりに斬新だったからだ。
「キーワードは“フルオープン、フルクローズ”」
晴れた日はパネル窓を全開にし、雨の日は閉じる。しかし、口で言うほど実際は簡単ではない。パネルをどのように開閉するか。折りたたむのか、それともスライドさせるのか。レールの角度はどうするのかなど課題は山積み。それらを一つずつクリアするうちに、あっという間に2年が過ぎた。そして、いよいよ試作品発表の日。パネルは何の問題もなく、極めてスムーズに開閉した。しかし、それを見た社長はこう言った。
「これは違うな。これでは認められない」
理由は開閉パネルに“すき間”が無いこと。普通の家なら、すきま風が吹き込まないよう、気密性を高めるのが常識だが─
「この商品は家やサンルームじゃない。庭なんだよ」
この商品の肝は、囲われながらにして風を採り込むことができる心地よさ。あくまでも“庭”を第2のリビングにする=「アウトドアリビング」の理念を貫こうという思いが、社長の言葉には込められていた。結局開発に5年をかけた「エクシオール」は、発売されると日本に“ガーデン市場”という新たな市場を確立した。家の庭で日々の暮らしを楽しむというライフスタイルを普及させたのだ。