
利用者視点で考える車椅子ユーザー
外出先に使えるトイレがあるかどうかは、
車椅子ユーザーにとってはとても重要な問題。
最近は多機能トイレなどの整備も進んでいますが、
まだまだトイレ利用で困るケースも多くあります。
日常的な買い物から仕事や学校、レジャーまで、
安心して外出できるようになるために、
どんなトイレが必要なのでしょうか。

スペースの確保と
適切な器具の設置が不可欠
車椅子でトイレを利用するには、スムーズに通過できる出入り口やトイレ内で方向転換できるスペースの確保、車椅子でアプローチできる洗面器や、便器への移乗をサポートする手すりなどの設置が重要なポイントとなります。

- JIS車椅子の最大寸法をもとにした数字です。(JIS T9210)
POINT
- 車椅子ユーザーがアプローチできる空間の確保
- 適切な器具の設置

- JIS車椅子の最大寸法をもとにした数字です。(JIS T9210)
スムーズに通過できる出入り口を計画
ドアは車椅子での開閉のしやすさに配慮し、引き戸を選択。開口は有効で900mm以上(最小850mm)確保します。
ドア横に、フットレストや後輪が入り込むスペースを300mm程度確保すると、取っ手や鍵に手が届きやすくなります。
車椅子での回転スペースを確保
大便器から洗面器や出口に向かうなど、トイレ内では方向転換をする必要があります。そのため、トイレ内には車椅子が回転するためのスペースとして回転域Φ1,500mmの円が描けるスペースの確保が必要です。※
- 建物の用途や規模によって、Φ1,800mmが求められることもあります。
大便器まわりのスペースを確保
車椅子での大便器へのアプローチや移乗の方法は、身体状況によりさまざまです。多様なアプローチへの対応に配慮し、大便器前方にはおよそ1,200mm以上、側方は700mm以上のスペースを確保します。
斜め前方アプローチ
大便器の斜め前方に車椅子を寄せて、手すりをつかみながら車椅子から大便器へ移乗する場合。
側方アプローチ
大便器に対して横に車椅子を寄せて、手すりや座面などで体をプッシュアップしながら座位のまま直接移乗する場合。
その他「正面アプローチ」や
「直角アプローチ」などがあります
「直角アプローチ」などがあります
手すりの設置
車椅子からの移乗や大便器からの立ち座り、座った姿勢の保持のために大便器の両側に手すりを設置し、動作の安定をサポート。壁側は垂直・水平方向の手すりが一体となったL型手すりを、反対側には必要に応じて動かすことのできる可動式手すりを設置します。
座ったままでも使いやすい洗面器
洗面器は車椅子で十分近づけるよう、足元の空間が確保された薄型形状で、車椅子に座っている状態で手洗いができる高さに設置します。
介助が必要なユーザーに配慮して、
ユニバーサルシート(大型ベッド)を設置
脳性マヒなどで座位バランスが取れず、衣服の着脱などをユニバーサルシート(大型ベッド)の上で行う人もいます。また、大便器を使用せず、おむつ交換を行う人もいます。周囲には、介助スペースを確保します。

-a出入り口有効開口幅:900mm以上
-bドアの操作部側に袖壁を設ける:300mm程度
回転域Φ1,500mmの円が描けるスペース
※建物の用途や規模によって、Φ1,800mmが求められることもあります。-a便器前方スペース:1,200mm以上
-b便器側方スペース:700mm以上
L型手すりと跳ね上げ手すりを設置
車椅子でアプローチしやすい洗面器を設置
ユニバーサルシート(大型ベッド)を設置
- プランは一例です。
男女別トイレにも、
車椅子で使える広めのブースを
アクティブな車椅子ユーザーの中には、一般トイレ内の広めブースを使える人もいます。男女別トイレ内に広めブースを設置すれば、男女共用に抵抗がある車椅子ユーザーも快適に利用できます。
出入り口有効開口幅:850mm以上
-a便器前方スペース:1,200mm以上
-b便器側方スペース:700mm以上
※車椅子のサイズや種類、身体状況によっては、使いにくい場合もあります。
- プランは一例です。
多機能トイレが混雑していて
「困った!」
車椅子ユーザーのうち、約72%が「多機能トイレで待たされた経験がある」と回答した、というデータ※があります。乳幼児連れやオストメイトなどさまざまな人に配慮した機能を盛り込んだ、広くて使いやすい多機能トイレ。一方で、利用者が集中し、車椅子ユーザーが利用できないという問題も生じています。こうした多機能トイレの利用集中を緩和させるために、これからは「トイレの機能分散」について考えていく必要があります。
- 出典:共生社会におけるトイレの環境整備に関する調査研究, 2018年度(国土交通省)

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